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大切な幼馴染みとの、不思議な絆の物語

「すると、ローブの絵描きは、手をあげて、その手をゆっくりと戻した。数回それが繰り返されて、先輩はそれが手招きだと気が付いたの」
 
「周りに人は誰もいなかった。絵描きと、先輩だけ」
 
「絵描きはずっと手招きを続けてた。何度も、何度も……。
 怖くなった先輩は、バイクのエンジンをかけて、すぐにその場を立ち去ろうとした」

「先輩はイーゼルに立てかけられていたキャンバスの中身をみたんだけど、
その、キャンバスに描かれていたのはね――」
「つまり、できるだけ自分で起きろと」
「そういうことだね。お母さんはまだ海外なんでしょ?」
「ああ。お前だけが頼りだったのに……」
「もう。なんでそんな寝起き悪いのかな?」
「体質じゃないか? ……昔はそんなでもなかったよな?」

「うん。むしろ積極的に起きてたよ」
「(他人ごとのように)ふうん……」
「あ、その顔禁止」
「え?」
「昔の事を思い出そうとしたり、俺迷惑かけてんのかなーって思った時はその顔するでしょ」
「顔に出てた?」
「わかりやすいほどにね」
「……すまん」
「別にいいんだけどね。お医者さんには少しずつ戻るだろうって言われてるんだし」
「そう言われて、早くも三年が経ちました」
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